当社グループは、不動産事業や電力プラント等のエネルギーインフラ事業において、アセットの開発・運営により、価値を高める事業モデルを磨いてきました。今後はこれに加えて、価値を高めたアセットを売却し、そこで生まれたキャッシュを次の成長につなげていきます。
不動産事業では、すでに多く実施していますが、開発・運営によって資産価値を高めた上で売却し、得たキャッシュを次の案件に再投下します。エネルギーインフラ事業でも、開発と運営に加えて売却による資金回収を一体で捉えていきます。
さらに、資産を動かしながら稼ぐ、リース事業への取り組みも強化しています。航空機や車両等のアセットを保有し、リースするだけではなく、資産管理やメンテナンスといったサービスの提供や、市場環境に応じて資産の取得・売却を機動的に行っていきます。
こういったビジネスモデルは、市場の流動性があることも重要ですが、当社が長年培ってきた強みがあるからこそできることです。例えば開発案件では、完成させた不動産や電力プラントが、市場で買いたいと思わせるくらいの価値を創出しており、「住友商事がつくったものだから間違いない」という評価が根付いているからだと思います。アセットの価値を高め、最も価値が発揮される形にし、次の成長につなげていく。この循環をより早く回していくことで、キャッシュ・フロー創出力を高め、個別事業の収益基盤をより強くしていきます。
また、事業ポートフォリオ全体の観点では、従来から進めてきた資産入替を着実に進めていきます。2026年度から2028年度の3年間で、当社グループは約1.2兆円規模の資産入替によるキャッシュインを計画しています。これは単に大型投資に伴うキャッシュアウトを補うためではなく、収益性や成長性の低い事業からの資金回収を進めることで、事業ポートフォリオの新陳代謝を加速し、より成長余地の大きい領域へ経営資源を振り向けるための重要な取り組みとして進めていきます。
DAISは、Digital & AI Strategyの頭文字を取った、当社グループのデジタル・AI戦略です。あらゆるビジネスの現場でデジタル・AIを駆使して、新たな価値創造モデルを構築し、社会や産業の変革をリードするための成長戦略です。
DAISには3つの柱(Pillar)があります。1つ目はSCSK自身の成長です。当社は、親会社としてSCSKの自律的で持続的な成長をサポートしていきます。SCSKは、システム開発からネットワーク構築等のITインフラ整備を一貫して提供できる体制を強みとしています。強みを活かして成長力をさらに伸ばすとともに、AI駆動型の強化とオファリング型への進化により、2030年度に2025年度比で利益倍増、営業利益率15%以上を目指します。2つ目は当社グループ自身の成長です。事業現場でデジタル・AIを活用し、売上拡大とコスト削減の双方からROICを高めていきます。そして3つ目は当社グループとSCSKの協業による成長です。
私は、SCSKに対して「当社グループがSCSKを使うのではなく、SCSKが当社グループを使い倒してほしい」と伝えています。SCSKにはデジタルソリューションがあり、当社グループには現場があります。現場で本質的な課題を見つけ、SCSKの専門性で解決し、その成果を業界やSBU*を超えて展開できれば、さらなる価値を生み出すことができます。スーパーマーケット事業のサミットストアにおけるAI自動発注や価格最適化、物流領域でのAI活用、コーポレート組織の高度化・効率化等、足元で70件超の具体的な取り組みが進んでいます。
今は、AIを使わないこと自体が最大のリスクになる時代です。当社グループはDAISを通じて、「デジタル・AIをフルに使って稼ぐ商社」へ進化していきます。ただ、私がDAISで重視しているのは、技術を導入することそのものではなく、顧客が本当に求める価値を再定義し、現場の暗黙知を形式知・組織知に変え、本質的な課題から新たな価値をつくることです。そうした現場の課題は、ハンズオンで事業を進めてきた当社の人財だからこそ見抜くことができます。SCSKの専門性とつなぎ、事業に実装していく。ここに、当社ならではの競争優位があります。
*SBU(Strategic Business Unit):戦略を一にする事業群を組織としたもの