SCSKの成長、当社グループの成長、そして両社の協業による成長を一体で進め、2030年度に向けて、DAISの効果でグループ全体のROICを1.0%引き上げるという目標を実現し、グループの稼ぐ力をさらに高めていきます。
先ほど私は、事業環境は地政学的なリスクの顕在化やAIの進化等、想像を超えるスピードで変化しているとお話ししました。近年、政変や紛争の勃発等、世界各地で地政学的なリスクが高まり、その影響が企業活動にも及んでいます。このような状況下、政治・経済のマクロ分析に加えて、当社事業やサプライチェーンへの直接・間接の影響、エネルギー安全保障関連リスク、政策変更リスクや規制動向等、多様なリスクを適切に分析し対処することがますます重要になっています。
そのために、当社ではインテリジェンス機能の強化に取り組んでいます。専任チームを設置するとともに、カントリーリスクや経済安全保障関連リスクを議論する「インテリジェンスカウンシル」を立ち上げる等、情報収集や分析の強化を進めてきました。
リスクの高まりや変化をいち早く捉え、それが当社事業やサプライチェーンにどのような影響を及ぼすのかを分析する。その上で、必要な対応策や全社方針を検討し、どのような手を打つべきかを考えながら、先手を打って備えていきます。
実際に、足元ではホルムズ海峡閉鎖の影響により中東地域とのトレードビジネスに影響が生じていますが、物流面では寄港地変更や途中荷揚げ、代替ルートの検討等を関係者と連携しながら進め、効果を上げています。
今後は、より長期間かつ広範囲に影響を及ぼす可能性がある重大リスクの分析や、その対応策の検討にも力を入れ、当社にとってどこに機会があり、どこにリスクがあるのかを見極めていきます。このような取り組みを通じて、リスクへの対応力やレジリエンスを高めるとともに、新たな成長機会の創出につなげていきます。
サステナビリティは、中長期的な企業価値向上を支える競争力の源泉です。地球環境や自然資本の保全・再生、人権の尊重が可能でなければ、人間の営みも、企業の成長や価値創造も続きません。だからこそ当社グループは、2050年カーボンニュートラル化の旗を降ろしていません。
一方で、2050年に向けた進捗のスピードは、各国の経済状況、技術の成熟度、経済性、エネルギー安全保障、地政学的リスクの高まりを踏まえながら、段階的に現実的なトランジションを行っていくことが重要です。そのためには、地域ごとのニーズを読み解き、機会とリスクを見極める力が必要です。
脱炭素への歩みは、地域ごとにスピードも道筋も異なります。だからこそ、一つの解を押し付けるのではなく、それぞれの国や地域に合った現実的な解を提供することが、脱炭素の歩みを加速するために重要です。私は、エネルギー安全保障の意識が高まっていることを考えると、これまで以上にエネルギーの地産地消がキーワードになっていくと見ています。当社グループでは、欧州の洋上風力発電、アジアの地熱・廃棄物発電、インドの太陽光・風力発電といった再生可能エネルギー事業等に取り組んでおり、これまで培ってきた知見を活かしながら、各国のエネルギーの安定供給と脱炭素を両立させていきます。
住友の事業精神である「自利利他公私一如」は、自らを利すると同時に社会を利するという考え方です。サステナビリティを競争力に変え、社会的に意義のある事業を通じて経済価値を創出する。この姿勢は、これからも住友商事グループらしい成長の軸になっていくと考えています。サステナビリティに資する事業は、短期的にはコストやリスクに見えることもあります。しかし、中長期で見れば、社会的責任を果たし、社会から必要とされる事業こそが強い事業になります。社会的価値と経済的価値の両方を向上させること、それが当社グループの持続的な成長を実現していく鍵となります。