AIは、どのように活用するかが、競争力の源泉そのものになっています。情報収集や分析の力は飛躍的に高まり、意思決定の質とスピードを変えています。しかし、AIを使いこなすのはあくまで人であり、最後は人が判断します。そのために、人の経験や知見を、デジタル・AIとどう掛け合わせるかが問われています。先ほどお話ししたDAISもその考え方に基づいています。
そして、AIと人財の観点で、私がよく申し上げるのは、「最後は人間力がものをいう」ということです。取引先と信頼関係を築く力、周囲を巻き込む力、夢を語り込む力、相手の話を聞き、相手の立場に立って考える力。AIが進化すればするほど、こうした人間力の重要性はむしろ高まると考えます。私たちの仕事は、最終的に、顧客やパートナーに、「この人、この会社と一緒に仕事をしたい」と思ってもらえるかが勝負だということです。
AI時代においても、最後は人の力が競争力となります。その力を最大限発揮するためには、組織も進化しなければなりません。先ほど、各組織の「自律」が重要だ、という話をしました。自分たちの事業を一番分かっている現場が自律的に判断して、成長に向けた勝ち筋を見極めることが大切と考えているからです。
2024年度には従来の部門制・商品本部制に代わる形で、グループ制・SBU制へと移行しました。SBUは、戦略を一にする事業単位です。各SBU長が自ら戦略を語り、現場が自律的に意思決定し、実行することができる体制としたのです。
こうした組織の変更に加えて、2025年度には予算制度を見直しました。これまでの予算制度のもとでは予算達成そのものが目標となってしまっているのではないか、と感じていたため、予算達成ではなく成長の実現を重視する考え方へと転換しました。こういった組織再編や制度変更を通じて、それぞれの組織においてより高い成長を目指していく風土が着実に根付きつつあります。
また、制度を変えるだけでは組織に考えが浸透していきません。私自身の考えを直接伝えるために、先ほども触れた「SHINGO CAFÉ」の取り組みを続けています。2026年7月で80回目の開催となりました。社員と同じ目線で向き合い、参加者からの質問や提案に対して、私の考えを伝えています。参加者からは、「中期経営計画のあの部分はそういった意味だったのですね。納得しました」という反応もよくあります。戦略は、職制を通じて伝言ゲームをするだけでは真意が伝わりません。人の腹に落ち、現場の行動に変わって初めて組織の力になると考えています。こうした対話を重ねながら、一人ひとりが自律的に考え、挑戦し続ける組織へと進化させていきます。
当社グループは、世界中の多様なステークホルダーに支えられています。だからこそ、ステークホルダーの皆様との対話を重ね、成長投資・株主還元・財務健全性のバランスと社会価値と経済価値の両立を図り、利益成長と資本効率の向上を着実に実行していきます。
先日、元スピードスケート日本代表の髙木美帆氏と対談した際、「現状維持では人間は退化する」という言葉を聞き、強く印象に残りました。これは企業にもそのまま当てはまります。過去の成功体験に安住すれば、環境が変わる中で相対的に後退していってしまいます。私は、現状にとどまることなく挑戦し続ける人財と組織こそが、「No.1事業群」を生み出していくと信じています。
中期経営計画2026はその通過点に過ぎません。住友商事グループは、変革を続け、「No.1事業群」を目指して持続的な企業価値向上を実現していきます。そして、「Enriching lives and the world」——世界中の人々の暮らしと社会を豊かにする、というコーポレートメッセージの実現を目指していきます。